乱数ポケモン
乱数ポケモンとは、エメラルドループ、プラチナループ、BWループ等、乱数発生器を意図的に操作し、生成したポケモンのことである。乱数調整、ループとも呼ばれる。
概要
ポケットモンスターシリーズのポケモンはデータであるので一定の規則に基づいて生成される。そのため、この生成手順で使用されている乱数発生器を、プレイヤーの入力(ゲーム内でのキー入力などの操作や、ゲーム機の日時変更など)で意図的に操作することによって希望するポケモンを発生させる手法がとられることがある。これが俗に言う乱数調整であり、乱数ポケモンを生成する方法である。狭義の改造ポケモンでは、各ポケモンに関するデータをプロアクションリプレイに代表されるいわゆる改造ツールや、セーブデータエディタなどを用い直接書き換えている。この点が乱数調整との大きな違いである。
ゲームによって一定の手法が確立されている。エメラルドループ・プラチナループ、BWループを参照。
乱数ポケモンの手法を用いることで、すべての個体値が最小のポケモンから最大のポケモンまで任意の個体値を持つポケモン、任意の性格を持つポケモンなど、そのソフトで理論上出現しうるステータスを持ったポケモンのうち、任意のステータスを持つさまざまなポケモンを生成することができる。
遺伝によって比較的高い個体値を持つポケモンを得ることは可能である。しかしながら、乱数ポケモンでは従来の手法では手に入れるのが極めて困難な、理想個体と呼ばれる、めざめるパワーのタイプや性格などの制約の中で最大の個体値を持つポケモンの生成を目的としている。
自然なプレイで偶然発生した乱数による結果を、その乱数を発生させた操作をそのままなぞることによって、全く同じ乱数を出させようという方式の乱数調整は「状況再現」という。
各世代における仕様と主な手法
- 第二世代までに乱数調整は基本的に存在しないが、第一世代のIDは一部の番号にかぎり「状況再現」方式の乱数調整により狙って割り振ることが可能。第二世代でもVC版銀に限って一部の番号を状況再現で割り振ることができる。
- 第三世代のGBAソフトでは約1/60秒ごとに行われる画面の再描画に合わせて乱数が更新される仕様になっており、基本的にこれを利用して乱数調整を行う。
- ルビー・サファイアではRTCに依存して初期seedが決定する。初期seedの変化は1分単位なので特定の初期seedを狙ってゲームを起動することは容易だが、狙いの初期seedになるまでに数週間から数か月を要することもある。
- ファイアレッド・リーフグリーンでは初期seedが0x0から0xFFFFの間のいずれかの値をランダムにとり、任意の値を狙って出すことはほぼ不可能とされている。しかし初期seedの状況再現は可能で、あらかじめ起動から初期seed決定までの待機時間ごとに初期seedを調べておくことで乱数調整が可能。
- エメラルドでは初期seedが通常0x0で固定されているが、ニューゲーム開始時のみ初期seedが0x0から0xFFFFの間のいずれかの値をランダムにとる。これに加えてバトルビデオを再生する際に保存されているバトルの開始時点のseedで現在seedが上書きされる仕様があり、これらを併用することで任意のseedを現実的な待機時間で再現することが可能になっている。
- ポケモンコロシアムおよび ポケモンXDでは初期seedが0x0から0xFFFFFFFFの間のいずれかの値を取り、制御・調整はほぼ不可能だが、GBAソフトとは異なり時間経過によって常にseedが変化し続けることが無いため、ゲーム内の事象を観測することで現在seedを特定し、乱数調整することができる。
- 第四世代では初期seed決定時点での本体時刻とゲーム起動からの経過時間(1/30秒単位)を用いた比較的簡単な計算により初期seedが決定する。
- 第五世代は本体時刻と経過時間等の内部値に加えてDS本体に固有の値を使った複雑な計算によって初期seedが決定する。しかし求められる操作精度は1秒単位であり、制御不可能な内部値もブラック・ホワイトでは2~3通り、ブラック2・ホワイト2でも6通り程度なので、他の世代と比べて成功させやすい。
- 第四世代と第五世代ではペラップにおしゃべりで覚えさせた音声が鳴き声として再生される際に音程が8192段階でランダムに変化する。これを用いることで狙い通りの初期seedに調整できているかを判断することができる。
- 第六世代は初期seedの制御・調整・再現ができず、さらにGBAソフトと同様に時間経過によって乱数が変化するため、乱数調整は不可能とされていた。しかし、初期seedは毎回完全にランダムに決まるのではなく、レポートを書くたびに書き換わる基準値と、前回のレポートからの経過時間(ミリ秒)によって決定する。現在ではこれを利用し、いちど総当たりで基準値を求めたあと、経過時間の範囲内で初期seedを探索する手法による乱数調整が確立されている。
- 第七世代は毎回完全にランダムに初期seedが決まり、制御・調整・再現はできない。しかし「つづきから」を選択するまでの画面では時間経過によるseedの変化はなく、「つづきから」に表示される主人公の顔画像のロード中に表示される時計の針の初期位置が乱数によって17通りのパターンから決定しているため、時計の針の初期位置の系列から初期seedを特定することができる。
- 第八世代はマックスレイドバトルに出現するポケモンのみ乱数調整の手法が確立している。[1][2]
- 第九世代はどうぐプリンターのみ乱数調整が可能。
乱数調整に関する事項
- 色違い
- 色違い個体は乱数調整によっても生成が可能。過去作産の色違いエフェクトが星になるか菱形になるかは、原則として性格値に依存するため、乱数調整によってどのエフェクトの個体にするか調整が可能。
- 個体値
- 乱数ポケモンなど、望みどおりの個体値を出すことができる方法がある。
- ファイヤー
- 第三世代のポケモンコロシアム、ポケモンXDでは乱数調整で使用されるポケモン。他のポケモンより消費速度が速いためである。
- マスターボール
- 乱数調整ではフレームがズレたと思われる場合、取り敢えず出た個体をマスターボールで捕獲して個体を確認して何フレームのズレがあるかを確認する手法が主流。
- レポート
- 一部ソフトではレポートを書くことを乱数調整におけるseed消費に利用することがある。
- バトルタワー (第三世代)
- 乱数調整ツールで引き当てたフレームを検索すれば、相手の手持ちポケモンを特定できる。
- 徘徊系ポケモン
- HGSSのポケギアに表示される徘徊系ポケモンは、固定エンカウントの乱数調整における初期SEED確認に利用される。
- サイドン (XD)
- 直前のダークルギア戦からの連戦でファイヤーと共に先発として繰り出されるため、戦闘中の乱数の制御が困難な事とバトルに出た時点で性格値と個体値が固定される仕様によって、XDの乱数調整において最高の難易度を誇る。しかし、てだすけが使えるため、戦略的価値は一応ある。
- ヒメグマ (XD)
- NPCによるフレーム消費が激しい上に異なるフレーム消費数で同じ個体が出てくるケースがほぼ無いため、乱数調整は不可能に近い。
- ポケモンボックス ルビー&サファイア
- 特定のID、裏IDを持つロムを乱数調整によって作成し、100匹預けて特別な個体を受け取ってから、そのロムと同一のID、裏IDを持つロムをやはり乱数調整で作成すれば、そのロムでは100匹預けなくとも再び特別なタマゴを受け取ることができる。このID乱数は1試行5分で済むため、これを活かすことで特別なタマゴを量産することが可能。これは、ID、裏ID、受け取りフラグでデータが判断されているために起こる現象である。
タイムアタックにおける乱数調整
RTAの基本レギュレーションでは、実機で可能な乱数調整を使用することが許可されている (Maniplessというカテゴリを除く)。ここでは各作品の主要なチャートで利用されている乱数調整の一部について記載する。
- 御三家 (第三世代、第四世代、第五世代)
- 上記の世代のRTAの上位記録では、最初に入手できる御三家を乱数調整で高個体にするという手法が取られる。記録によっては、ゲーム起動から途中まで一定の動きをすることによって、御三家だけでなくその後の野生エンカウントなどを調整している。
- カイオーガ (サファイア)・レックウザ (エメラルド)
- サファイア・エメラルドの上位記録では、それぞれカイオーガ・レックウザの戦闘前にレポートを書き、そこから乱数調整で高個体を出現させ、さらに捕獲するまでを調整している。カイオーガはネットボールで、レックウザはモンスターボールで捕まえることにより、マスターボールを拾う時間をカットしている。
- キャモメ (サファイア)
- サファイアのRTAでは、カナズミジムの攻略を楽にし、その後そらをとぶ要員として用いるキャモメを入手するために、個体、出現、捕獲の乱数調整を行うことがある。
- ケーシィ (サファイア、エメラルド)
- サファイア、エメラルドのRTAでは、そらをとぶがフィールドで利用できるようになる前に、テレポートを利用して街の移動を行うために野生のケーシィの出現、捕獲の乱数調整を行うことがある。
- 野生ポケモンの持ち物 (ダイヤモンド・パール、プラチナ)
- 野生ポケモンが低確率で持っている道具を入手するために、乱数調整によってその道具を持った状態のポケモンを出現させることがある。DPtのヒコザルチャートにおけるしあわせタマゴ持ちのラッキーや、プラチナの旧世界記録で使われているポッチャマチャートにおけるメトロノーム持ちのコロボーシなどがある。プラチナのバグありレギュレーションでは、どくバリを持ったドククラゲを乱数調整で入手するチャートが使われている。
- ポケルス (プラチナ、ハートゴールド・ソウルシルバー)
- 乱数調整によって狙って感染させることが可能。乱数調整ありのRTAでは獲得努力値を増やす貴重な手段となる。
- コイキング (ハートゴールド・ソウルシルバー)
- 乱数調整を用いたRTAでは1/46の確率で出現する43ばんどうろ産レベル50コイキングを狙って出現させるチャートを利用する場合がある (乱数調整を行わずとも、むしよけスプレー等を利用して出現させることはできる)。
- エンテイ (クリスタルバージョン)・ライコウ (ハートゴールド・ソウルシルバー)
- HGSSのRTAでは、ニューゲームからリセットせずに乱数消費をコントロールしてめざめるパワー(いわ)理想個体を調達するというルートがある。捕獲用のマスターボールも乱数調整によってIDくじを当てて調達するのが乱数ありの伝説の三聖獣チャートではお決まり。クリスタルバージョンでは個体値を乱数調整することはできないが、徘徊場所の調整とマスターボール乱数はできる。
- ヨーテリー (ブラック・ホワイト)
- BWでは乱数調整で野生のヨーテリーを出現させて使用するチャートもある。2020年5月に日本語版・英語版共に世界記録を叩き出した主流チャートとしてヨーテリーチャートが確立された。初期seedを入力することで目的のヨーテリーに遭遇することができるかどうかを調べるツールもある。
- モグリュー (ブラック2・ホワイト2)
- BW2では、ヒウンげすいどうで砂埃から出現するモグリューを、乱数調整を利用して高個体のものを出現させ、主力として起用するチャートがある。
備考
- 乱数ポケモンについて、公式サイドは見解を示していない。
- ただし、第六世代の公式大会ではカロスマークの無いポケモンの参加を禁止しており、第五世代以前から連れてきた乱数ポケモンをそのまま使うことについては多少制限しているといえる。それでも連れてきたポケモンからタマゴを産んで、そこで産まれたポケモンは使用可能(あかいいとにより5Vのポケモンを産むことは容易)で、また大会以外の通信対戦ではカロスマークが無くても使用可能のため、一概に厳しくなっているとは言いがたい。
- 乱数ポケモンの利用についてはさまざまな場所で議論が起こっている。
- 第五世代までは厳選の難易度が高かったため、特殊なプレイで簡単に理想個体が手に入る乱数調整への批判や反感が目立っていた。しかし第六世代以降は厳選の易化、それに反比例した第六世代以降のソフトでの乱数調整の困難化などから、反対意見は沈静化している。また、現在ではレトロゲームに属する古い世代のソフトの楽しみ方として定着しつつもある。
- 2018年に行われた不正競争防止法[3]改正により、乱数調整ツールの配布が「技術的制限手段を回避するサービスの提供」に該当するのではないかという議論が為されるようになった。乱数調整はあくまで正規プレイによって可能な挙動を再現するため厳密には不正競争防止法違反ではないが、実際には警察当局の裁量、法解釈によるところもある。